サクラノ前夜
正直、桜というものにろくな縁はなかった。
お花見なんてほとんどしてこなかったし、いざしようと計画を立てれば雨が降って頓挫した。
桜餅も別に好きじゃないし、スタバとかでよく売ってる「さくら味」とかのフレーバーはどっちかといえば嫌いな方だ。スタバに行ったことはないので分からないが。
さくらという名前の人と親しくなった思い出も別にないのに、桜井さんという女子にフラれた思い出だけはきっちり存在している。
だからという訳ではないけれど、桜といえば(?)な4月は、あまり好きな時期ではない。ココ最近花粉症デビュー気味な気もするし、人見知りな自分にとって新しい環境に身を置くことは楽しみよりも不安などのストレスを感じがちだ。
さすがにいくらお題といえども、好きでもないことを記事になんてできないから、早く次のお題に移らないかなと思っていた。
けれど、少し用事があって外に出たその時、目の前の木の桜が風に吹かれて散っていた。
嫌いすぎるから意識の外にあったからなのか、それとも本当に今まさにのタイミングなのか、いずれにしても久々にそんな光景を目にしたような気がする。
ああやっぱり綺麗だなあ、とか、散る瞬間が1番美しいなんてよく聞くけど案外嘘でもないんだな、とか、色んな想いが自分を巡った。それと同時に、なんとなく晴れやかな気持ちになれた。
卒業してからなんとなく抜け出せていなかった高校生の気分を、ようやく今脱げた気がした。
こんなに明るい気持ちになれるなら桜も捨てたもんじゃないなと思いながら、僕は新しい学年に向かった。
いや俺浪人してたわ。