回復したい日々

いろいろ書いてます

アンハッピーホームアカデミー by caramel

お題「#おうち時間

 

ずっと家にいると、さすがに家族の細かい事情も把握するようになってくる。普段は自室にこもりきりの僕でさえ、姉の『あつまれ どうぶつの森』のスタート画面のBGMを覚え口ずさむようになってきた。

口ずさむと必ず言ってくるのが、「あつ森面白いけど、やる?」という姉のセリフだ。そう、僕はあつ森を買っていない。というより、すぐ飽きそうで無駄な出費だと思い、買わなかったのである。面白そうなのはたしかだが、買わなかったものを今更やりたいと言うのは決まりが悪い。姉の問いかけに僕はいつもNOと返事をしていた。

しかし、本当はやりたいのである。本当にやりたいことを自分の見栄から拒否しても、心はあつ森の虜なのだ。僕の心はまだやってもいないあつ森に想いを馳せ、どうやればあつ森の楽しさを体験できるだろうかと悩み続けていた。

そこで、かつてもっていた『おいでよ どうぶつの森』をプレイすることにした。懐かしいBGMに、かつてと変わらずそこにいる住人。いつまで経ってもアイドルを目指してダイエットをしている住人を見て、僕はいい加減痩せろよと言いたくなった。

 

『おいでよ』をプレイして数日が経った。ある日、とある住民Cから部屋に遊びに行きたいとの申し出があった。僕は許可なんて得ず堂々と住民の家に入るのに、この子はなんて気の遣えるいい子なんだろうと思い、快諾した。現実でもそうしない家の衣替えや家具整理などをし待っていると

「おじゃましまーす!」

と、なんとも可愛らしい声で入ってきた。相手はゲームで、しかもどうぶつなのに、なんだかこれから自分が予想だにしないことが起きそうでドキドキしていた。体感で言えば彼女を部屋に招いたのに相違ない感情だった。

そうしてCは僕の家をしばらく徘徊していた。話しかけてみた。なんだか難しいことを色々と言われたのち、最後にはこう告げられた。

 

「この家は☆☆☆って感じですね。」

 

キレかけた。僕の理性も、電源も。

しかし、僕の家が広いだけで殺風景であることは傍目から見ても事実である。実際、Cは僕の部屋に生活必需品、特にベッドがないことを問題視していたようだ。言われてみればその通りである。いちゲームプレイヤーである僕からすれば寝ることはセーブすることだが、この世界に住む住民からしてみれば寝ることは寝ることである。明日のデパートへ望みを託し、僕はその日の村ライフを終わりにした。

 

次の日、家から出ると手紙が届いていた。Cからのプレゼントだ。どうやら僕の部屋にお似合いのものを送るそうだ。そこで気がついた。そう、昨日のベッドのくだりは伏線だったのである。そんなことも気がつかずに怒ってしまって申し訳ないと思いつつ、早速プレゼントを開けた。

 

『バンブーなゆか』

 

 

僕は電源を切った。今後村においでになることは、二度と無いだろう。リセットさんの説教をリセットし、僕はスマブラを起動した。(for 3DS)