回復したい日々

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夜を駆ける刃

1日の中でなにかすべきことがあると、その日はあっという間に過ぎる。気がする。僕の場合はバイトだったり授業だったり、はたまた友人との約束だったり。そういうようなことを日中過ごせば、気づけばすぐそこに夜はいる。まだまだ大人とは言い難い僕にとって夜というのは家で大人しく過ごす時間帯であり、誰かと遊ぶ時間帯とはまだあまり言えない。スマートフォンだって本だって家にはいくらでもあるし、その気になれば誰かと会話することだってできるけど、僕個人において夜というのはひとりで過ごすことになる。

けれど、これが寂しいとかつまらないなどというのは全く別の話であり、むしろ僕は夜寝るまでの時間が好きだ。くだらない動画を見て笑ったり、好きなアーティストの音楽を聞いたり、そういうことに没頭できる。没頭というのは誰かとでは出来ず、ひとりでないとできない。夜は没頭にうってつけなのだ。

そう過ごしていると、あっという間にやってくる夜もあっという間に過ぎていく。現にいまも気づけばもうすぐ23時で、うかうかしていればもう日付が変わり、月曜日がやってくるのだ。没頭の終わりを感じるようなこの感じが僕はあまり好きではない。終わりを感じたらすぐ、終わりはやってくる。僕は一生を自分が好きなことをする時間だけで生きていたいのだ。

たとえば、僕は眠ることが好きだが同時に嫌いでもある。寝たら最後記憶がなくなり、気づけば朝を迎えている、ような気がしてならないからだ。しかし、眠気に身を任せ、夢心地で微睡むひとときはたまらなく好きだ。あの瞬間をずっと感じていたいと思う。しかし、いくら試行錯誤しても目を閉じれば次は朝だ。どんなに起きようと気をこらしても、襲い来る眠気にはかなわない。

そこで、妙案を思いついた。アイマスクである。アイマスクならば、目を開けていても暗い視界を保つことができ、睡眠時の意識がない状態よりも、意識を手放さない微睡みの状態の方を長く体感できるのではないか?早速買って試してみた。立体型の、炭の匂いがするやつである。ウキウキしながら装着し、擬似睡眠を試みた。

 

 

気がつけば、僕の枕元でアラームが鳴り響く。効果、というより微睡みは一瞬だった。

考えついた時は素晴らしい案だと自画自賛したものだが、どうにもうまくはいかなかった様である。失意の中、僕はアラームを止め朝食を摂り、バイト先へ向かう。朝の5時とはいえ11月、まだまだ外は暗い。空もまだアイマスクを使って眠っている時間なのだろう。

 

アイマスク作戦の失敗をせめて笑いに変えようと、バイト中にパートの方に話してみた。話の途中、アイマスクの炭のところから、話は二転三転、最終的に鬼滅の刃の話へと移り変わっていた。Wikipediaでリサーチした知識で鬼滅トークに花を咲かせる。パートさんは満足したようだ。

 

バイトから帰宅し、パートさんが熱く語っていた鬼滅の刃を見る。冷やかし半分で見ていたのだが、気づけばのめりこみ、時間を忘れて一気に最終話まで視聴していた。気がついた時には、時計は23時を示していた。