回復したい日々

いろいろ書いてます

Goodbye POWER PLAY

わりとガタイのいい僕は、家では力仕事を担当することがほとんどだ。

力仕事はその名の通りパワーが必要であり、そのぶん、というかその代わりに、頭脳的な要素をあまり必要としないような気がする。だいたいが親に持つものを指定され、それを置く場所を指定され、ただ動かす。肉体的な疲労さえ除けば、これほど楽な仕事もない。ただただ機械的に身体を動かせば親から感謝されるので非常にコスパが良い。

それに長年甘んじてきたからなのか、僕は自分自身で判断する仕事があまり得意ではない。もっと言うと、とっさの判断を必要とする仕事や作業が下手くそだ。

例えば、料理の手伝いをするとき。母親にたまねぎを適当な大きさに切ってくれと頼まれる。この時点で僕は無能な木偶の坊になる。「適当」という言葉に頭を支配され、おそるおそる包丁を手に取りたまねぎを切ろうとするものの、肝心の手は動かない。指示待ち人間ここに極まれりである。パワータイプは頭が悪いというあるあるは案外こういうところから来ているのかもしれないなと思った。

 

話は変わるが、先日ある女性と横浜に来ていた。いわゆるデートというやつだが、そこで事件は起きた。彼女は急激な温度差に弱く、まだ寒い外に対してショッピングモールは蒸していると思えるほど暖かかったために具合を悪くしてしまったのだ。

慌てて近くのフードコートに駆け込み、彼女を座らせる。よほどつらかったのか、彼女は倒れるように机に突っ伏したのである。

恐るべき緊急事態に僕は狼狽えていた。冷たいものを買いに行こうにも、彼女の好みを何ひとつ知らない。それ以前にこんなに辛そうな彼女を一人にしていいのか。一体どの行動が最適解なのか分からず、フードコートの席でひたすらに背中をさするロボットになっていた。

その後は結局少し回復した彼女に好きなアイスと飲み物を聞き、慌てて買いに行くという情けないオチとなった。頑なに代金を払おうとする彼女を制することでかろうじてプライドを保った。

 

家に帰り僕は泣きたくなった。LINEに灯る「今日はありがとう」のメッセージが素直に受け取れなかった。今日のような情けない対応では、いずれ社会人として自立することができない。

なんとかしてフレキシブルな対応力を手に入れなければならない。

どうにかして不慮の事故にも安心してもらえるような男にならないといけない。

そう決意して、僕は引越し作業のアルバイトを辞め、ガストのアルバイトへと足を踏み入れた。

 

 

 

 

店長『〇〇くんはホール希望なの?うーんでも初めてだろうし、今は人が足りてるから、慣れるためにもまずは皿洗いから始めてみようか!』

 

こうして、僕は元気に皿を洗うのであった。

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