回復したい日々

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30秒はしっかりと!

 

浪人の苦労、挫折を乗り越え、ようやく勝ち得た夢の大学生活は、代わり映えしない自室で一人パソコンとにらめっこする現実のまえに打ち砕かれた。寂しさをかき消すためにつけたテレビからは、枯れ木ほどの賑わいすら感じることはできない。

 

元来人見知りであるところの僕は、新しい環境に慣れる必要が無いことにはじめは安堵していたが、やがて浪人時代から何も変わらぬ交友関係、そして自身を取り巻く環境に飽きを感じ始めていた。このままではフル単したことだけを自慢し続ける哀れなモンスターへと変貌してしまうのではないか。授業以外にやることがないために評価が『優』であふれる成績から、そんな悲しい未来を案じた。

 

 

ふと我に返る。そんな哀れなモンスター、奴はいったいどんなモンスターなのだろう。自分が将来そんなモンスターにならないためにも、一度奴の特徴や見た目を分析しておく必要があるかもしれない。

まず、モンスターといえばおぞましい容姿だろう。全体的に丸みを帯びていて、全体にいぼのようなものが無数にある。皮膚はなんとなく緑色で、紫色のツノが生えていそうだ。しっぽの先は鋭利さにみちており、毒を分泌するはずだ。そしてもちろん化け物なのだから、おそらく口から液体のようなものを吐いて攻撃をするのだ。ああ恐ろしやモンスター。考えるだに胃がせり上がる思いである。

 

ここまで妄想したところで、またもふと我に返る。

そんなにわかりやすくモンスターの見た目をしていたら、かえって避難や対策、もっといけば捕獲はたやすいのではないか? 令和にもなった今、危惧すべきはもっと得体の知れないモンスターである。

例えば、ヒト自体が気づかぬうちにモンスター化している、とか。

ヒトを宿主にして内側から弱らせる、とか。

ヒト同士の接触を媒介して感染する、とか。

もしも世界がそんな目には見えないモンスターであふれかえったら、我々人類に為す術などないだろう。あるとすれば、せいぜいしっかり手を洗うことくらいである。

とはいえ、もしもはもしもである。現実ではない。いくら僕がこんなモンスターを想像してみたところで、実際に起こるなんてよっぽどじゃ無い限りあり得ない。もしそんなモンスターが世界に現れたら、大学生活どころか日常生活さえも脅かされてしまうではないか。不謹慎なことを考えてはいけない。

 

そうしてまたまた我に返り、くだらない妄想を中断する。ふとつけっぱなしのテレビに目をやると、感染者数の報道をするニュース番組が流れていた。コメンテーターが、『我々が感染を防ぐためには、手洗いを徹底することだ』と言う。やはりウイルスもモンスター同様、手洗いには弱いらしい。それらを欠かさない僕の大学生活は、やはり夢で満ちあふれていることだろう。

防衛作戦、大成功である。まだ見ぬ、見えないモンスターを除いて。

 

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https://youtu.be/N48KY74BpA4